「従業員の行動を監視する」という目的で工場に防犯監視カメラを設置したいというご相談が増えてきています。
防犯監視カメラは防犯以外にも活用できますが、その扱い方を間違えると、時としてプライバシーの侵害として訴えられかねない、デリケートな問題もあります。
工場の導入に関して、プライバシーの問題を回避するために留意すべき点について解説していきます。
■その監視カメラの設置自体に問題はないか?
会社や工場に防犯監視カメラを設置することは珍しいことではなくなってきていますが「職場に監視カメラが設置されているがプライバシーの侵害ではないのか?」という疑問や不満の声は今でも多く見受けられます。
作業の監視などを目的とした合理的な目的がある場合、工場内に監視用の設備を設置すること自体が違法になることはまずありません。
とは言っても監視カメラを施設内のどこに設置しても良いということではありません。
例えば作業場所や生産に関係ない休憩場所や更衣室、お手洗いの中などにまで設置することは好ましくないと言えます。
少し想像してみれば分かることですが、休憩中まで監視されていると考えると心が休まりませんし、着替えやトイレを利用している時の様子を他人に見られるのは気分がよくありません。
特に問題が発生していない場合や合理的な理由がない場合に、そういった従業員個人のプライバシーに関わる場所にまで設置していた場合、訴えられてしまう可能性があります。
また、プライベートに問題がある従業員を就業時間以外で監視することもプライバシーの侵害となってしまいます。
あくまで「就業中の作業管理」であることを念頭に、運用方法を検討しなくてはいけません。
■従業員の理解、承認を得ているか?
監視カメラを通して作業の様子を確かめることをモニタリングといいますが、モニタリングに関しては経済産業省によって「ガイドライン」が定められています。
簡単にまとめますと、
・ モニタリングによって取得する個人情報の利用目的をあらかじめ特定し、社内規程に定め、それを従業者に明示し、事前に社内に徹底すること。
・モニタリングの実施に関する責任者とその権限を定めること。
・モニタリングの実施状況について、適正に行われているか監査又は確認を行うこと。
が必要になってきます。
これらの基準に則って手順を踏まない場合や、監視行為がプライバシーの侵害に当たってしまうこともあります。
目的も分からずに監視されているということは従業員を不快な気分や不信感を与えてしまう原因にもなり、労使の信頼関係や職場環境の悪化を招く恐れもあります。
そうならないためにも監視目的を明文化し、同意書などで事前に従業員からの理解を得ることが望ましいでしょう。
■まとめ
監視カメラは従業員の作業管理や就労環境を見直しなど、生産性を高めるために大いに活用することができます。
しかし、従業員のプライバシーを無視した監視環境では得られるメリット以上のデメリットを生む可能性があります。
そうならないためにも、監視カメラを導入する場合は、設置場所からその後の運用にまで気を配ることが大切です。